こんにちは。アラフォーパパです。
今回も生物に関連する内容ですが、大学入試用というよりは、時事問題を生物基礎の範囲で考えてみようという話題提供となります。
うまく表現できればいいなと思っています。
ただし、時間が経つにつれて正しい情報が出てくると思いますので、現時点で厚生労働省から発表されている内容を中心に取り扱ってみたいと思います。
紅麹について知ることで、微生物について興味が湧き、大学入試に積極的に取り組む原動力になればと思います。
それでは、御覧ください。
目次
紅麹とは
今回の話題の中心は紅麹です。
紅麹は蒸した米に紅麹菌を混ぜ入れ、発酵させた米麹のことです。
紅麹菌はベニコウジカビ(Monascus属のカビ=真核生物)です。
麹カビは核もありますし、細胞小器官もありますので注意しましょう。
カビの仲間ではありますので、生きており、自身が生活していくために必要な物質を生産しています。
その代謝の中で、モナコリンKと呼ばれる成分が作成されることから、サプリメントとして白羽の矢が経ったものと思われます。
モナコリンKはロバスタチンと呼ばれる物質と同じもので、スタチン系としてまとめて表現されるLDLコレステロールを下げる効果のある医薬品の仲間です。(ただし、サプリメントに含まれる量では効果が出ないかもしれませんが。)
ヨーロッパで検出される紅麹菌の一部ではシトリニンと呼ばれる腎毒性のある物質を産生するようですが、日本で使用されている紅麹菌はシトリニン産生しないものを選んでいるようです。
生物基礎のセントラルドグマの解説を思い出してみてください。
DNAに遺伝情報が含まれていて初めてRNAをつくりタンパク質を生産することができます。
このことから、紅麹菌を使用する前にDNAを調べてシトリニンを生産しないことを確認しておけば、問題のない紅麹菌を選ぶことができるというわけです。
今回の紅麹含有製品でおきた問題とは
今回使用されていた紅麹菌自体は安全であるはずです。
しかし、健康被害が発生し、製品を生産していた企業が公表しました。
公表が遅れたことも問題とされています。
ちなみに、今回の件に関連して受診した場合は、無症状であっても保険診療で対応してもらえる可能性があります。
さらに、小林製薬は自己負担分の医療費などを負担する旨の発表をしています。
現在の調査状況は?
当初、企業側が想定していない成分が検出されたという公表がありました。
このときに使用された機械がHPLC(高速液体クロマトグラフィー)と呼ばれるものです。
様々な物質が含まれる液体を分離用のカラムを通すことによって、1つ1つ出てくるタイミングをずらすことが可能です。
R6年3月29日には、想定していない物質がプベルル酸であることが発表されました。
さらに、R6年4月19日にはプベルル酸以外の複数の物質が含まれていることが公表されました。
現状では、同定できていない化合物の同定作業を行っているところです。
したがって、原因物質や混入した原因は特定されていないのが現状です。
誤った情報を信じて誹謗中傷するのはやめましょう。
HPLCとは
当初含有成分を分離するために使用されていた機械です。
様々な物質が含まれる液体を分離用のカラムを通すことによって、1つ1つ出てくるタイミングをずらすことが可能です。
ある程度の量が試料に含まれていないときちんと検出できないため、含有量が極めて少ない化合物の検出は苦手です。
また、分離用のカラムできちんと分離するためには、試料を溶かす液体を選定する必要があります。
さらに、似た成分を分離するためにはゆっくりと時間をかけて行うことが必要です。
加えて、一度ピークが検出されただけでは確実とはいえませんので、再現性があるかどうかも確認が必要です。
これらのことから、発表までに時間がかかったものと思われます。
LC/MSとは
LC/MSは、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)の一種に分類され、液体中の成分を固定相と移動相の相互作用の差を用いて分離し、質量検出器で検出する手法です。
他の共存物の影響を受けにくく、選択性の高い分析が可能となります。
比較的微量の成分でも検出しやすいですので、HPLC単独で検出が難しかった複数の物質を分離できたものと思われます。
NMRとは
NMRとは 核磁気共鳴 (Nuclear Magnetic Resonance) の略称です。
構成原子の置かれた環境を1つ1つ区別して調べることができ、原子同士のつながり方もわかる測定法 です。
化合物の形状をはっきりと確定できるわけではありませんが、どのような原子同士のつながりがあるかをしることができるので、質量分析の結果と合わせることで、調べている化合物の形状を推測することが可能になります。
プベルル酸とは
今回、最初に同定された物質であるプベルル酸とはどのようなものでしょうか。
これはプベルル酸の化学構造式です。
すでに発見されている物質で、1932年に報告されています。
このときには、山梨県産のぶどうを発酵させて得られた青カビを用いて研究をしており、ペニシリウム・ヴィティコラという種の青カビでした。
もちろん青カビも真核生物ですので、核や細胞小器官があります。
マラリアに効果があるという研究結果がありますが、マウスでは毒性も同時に確認されています。
今回の紅麹問題で最初に名前がでてきた物質ではありますが、この物質が腎障害を起こしたかどうかは不明ですし、原因物質がどうかも不明な状態です。
まとめ
今回は、紅麹問題について、生物基礎を絡めて解説しました。
紅麹菌や青カビが真核生物であることや生産される物質(たとえばプベルル酸)はDNAから翻訳されてタンパク質として産生されることが生物基礎の内容でした。
HPLCやLC/MS、NMRのような機械類は生物基礎とは異なる分野の話でした。
現実の問題は様々な分野の知識の複合体となっていることを理解していただけると幸いです。
さらに、最近はすぐに結果を求める傾向にあると思いますが、問題物質の検出や同定には非常に時間がかかるため、研究者は一生懸命実験を繰り返していることを理解していただけるとよいかと思います。
コメント