こんにちは。アラフォーパパです。
前回の記事では、「中和滴定のキモは?」と題して解説をいたしました。
中和滴定は十分に理解することはできましたか?
計算をすることも多いので、ミスなく素早く計算できるように繰り返すことが重要です。
この記事からは、酸化と還元について解説していきたいと思います。
酸化といえば、酸素が結合する反応というイメージがあると思いますが、高校ではもっと広い範囲での酸化について学びます。
同様に還元についても広い範囲の内容になっていくので、新しい定義をしっかりと理解しましょう。
それではご覧ください。
目次
酸化と還元の定義
みなさんは、酸化や還元をどのように覚えていますか?
中学生の時には、酸化は酸素と結びつくことと習ったのではないでしょうか。
木を燃やせば、二酸化炭素CO2と水H2Oができました。
マグネシウムMgを燃やせば、酸化マグネシウムMgOができました。
このようにして、もともとの物質が持っていたものに酸素Oが結合したのが酸化と定義していました。
また、酸化鉄FeOと炭素Cを反応させると、鉄Feと二酸化炭素CO2ができるという還元反応も学んだと思います。
しかし、化学基礎では酸化や還元をいくつかの定義により説明していきます。
1つずつ見ていきましょう。
酸素の授受による定義
先程も出てきましたが、酸素のやり取りによって酸化や還元を定義します。
例えば、酸化鉄と炭素の反応です。
FeO + C → Fe + CO2
これは鉄から酸素を奪うため、還元反応として紹介されることが多いのですが、化学基礎ではもう少し深く考えていきます。
FeOは酸素を与えて自分がFeとなり、還元されますが、Cは酸素を受け取ってCO2になります。
つまり、FeOに注目すれば還元反応ですが、Cに注目すると酸化反応なのです。
このように一つの式の中に酸化も還元も含まれている場合があります。
酸素原子の移動の状況を見て、酸化や還元を判断しましょう。
水素の授受による定義
次に、水素原子の移動によっても酸化と還元を定義できます。
ヨウ素(I2)と硫化水素(H2S)の反応を見ていましょう。
化学式は、I2 + H2S → 2HI + S となります。
水素の場合は、水素を失うと酸化で、水素を得ると還元です。
つまり、H2SはSとなり、水素を失っているので、H2Sが酸化されたということになります。
また、I2はHSとなり、水素を受け取っているので、I2が還元されたということになります。
酸素の授受による定義とは、水素の授受と酸化または還元の関係性が反対となっているので、注意が必要です。
電子の授受による定義
さらに、様々な反応に対応できる定義として、電子の授受による定義があります。
電子の場合は、失うと酸化、受け取ると還元です。
酸素の授受や水素の授受の式を例にあげて、確認してみましょう。
①FeO + C → Fe + CO2
FeOに注目すると、還元であると酸素の授受による定義のときは解説しました。
電子の状態を見てみたいと思います。
FeOの場合、Fe2+とO2-が結合していることになります。
2価の鉄の陽イオンから鉄に変化しています。
電子が2個足りない状態から、電子がちょうどよい数に増えている(受け取っている)ので、FeOに注目すると還元となります。
また、CがCO2に変化する場合には、炭素が4価の炭素の陽イオンに変化していると考えることができるので、酸化です。
このことから電子の授受で定義をすれば、酸素の授受での定義も含めて考えることができそうです。
②I2 + H2S → 2HI + S
水素の授受で定義し化学反応式も見てみましょう。
I2から2HIへの変化では、ヨウ素分子から1価の陰イオンとなり、電子を受け取っているので、還元となります。
H2SからSへの変化では、2価の陰イオンから硫黄原子へと変化しており、電子を失っているので、酸化になります。
このように、水素の授受による定義も電子の授受による定義で説明することができました。
電子の授受による酸化と還元の判断は、これだけにとどまらうず、酸素や水素のない化学反応式においても酸化と還元を判断することが可能です。
③Cu + Cl2 → CuCl2
銅と塩素による反応で、塩化銅(Ⅱ)ができる場合を考えてみましょう。
酸素も水素もないので、それらの授受による酸化と還元の判断は無理そうです。
そこで、銅と塩素の電荷をそれぞれみて判断してみましょう。
Cu→CuCl2では、Cuは2価の陽イオンへと変化しています。
そのため、Cuは酸化されています。
Cl2→CuCl2では、Clは2価の陰イオンへと変化しています。
これは、Clが還元されていることを示しています。
つまり、これからはどのような化学反応であろうとも、酸化と還元の判断ができるようになるということです。
電子の授受による定義の際に、電子が失われたのか、受け取ったのかを判断するために、電子e–を含む反応式を記載することがあります。
慣れてくれば書かなくても十分に判断することができると思いますが、最初は書いてみてください。
それでは、さきほどのCu + Cl2 → CuCl2を例にあげてみましょう。
銅に注目した反応式は、Cu → Cu2+ + 2e–となり、電子が失われたこと(酸化)がわかります。
塩素に注目した反応式は、Cl2 + 2e– → 2Cl–となりますので、電子を受け取っていること(還元)がわかります。
このような式を書くようにして慣れていければよいのではないでしょうか。
酸化数
電子の授受による酸化と還元を把握するために、イオン化した際に状態を考えて判断していきました。
これには、明確なルールがあり、酸化数という言葉も定義されています。
ルールがあり、番号が振られていて、条件が重複する場合は数字の若い方のルールを優先(ルール1とルール3ならルール1を優先)するという決まりがあります。
それでは、ルールを見ていきましょう。
ルール1:(1)単体の酸化数は0(FeやO2など)
(2)イオンの酸化数はイオンの電荷と等しい(O2-なら-2、Cu2+なら+2)
(3)化合物全体の酸化数の和は0
ルール2:(1)アルカリ金属の酸化数は+1
(2)アルカリ土類金属の酸化数は+2
ルール3:化合物中の水素Hの酸化数は+1
ルール4:化合物中の酸素Oの酸化数は+2
それでは、例題を利用して、ルールを使ってみましょう。
酸化数の例題
①FeO + C → Fe + CO2
ルール1の(1)からFeOとC、Fe、CO2はそれぞれ酸化数0です。
FeOのOはルール4から-2なので、Feは+2です。
CO2のOもルール4から-2ですが、Oは2つあるため、Cは+4わかります。
これらのことから、Feの酸化数は+2から0に減るので、Feは還元されたと判断できます。
また、Cは酸化数が0から+4に増えるので酸化されたと判断できます。
②I2 + H2S → 2HI + S
ルール1より、単体と化合物全体の酸化数の和は0です。
H2Sは、ルール3からHが+1なので、Sは-2となります。
HIは、ルール3からHが+1なので、Iは-1です。
以上から、Sは-2から0に変化するので酸化されており、Iは0から-1に変化するので還元されています。
③Cu + Cl2 → CuCl2
ルール1より、単体と化合物全体の酸化数の和は0です。
問題はCuCl2なのですが、ルールになく、どうすればいいのだろうか?となります。
ここからは経験則ですが、ハロゲンは-1として計算することが多いです。
イオン化した時にCl–になるからですね。
そのため、Cuは+2と考えます。
結果として、Clは0から-1になり、還元されています。
Cuは0から+2に増えているので酸化されています。
ただし、例えばHClO4の場合、ルールを先に適用するので、Clの酸化数は+7となり、-1ではありません。
ルールを先に適用することが大前提です。
④SiO2 + Na2CO3 → Na2SiO3 + CO2
ルール1より、単体と化合物全体の酸化数の和は0です。
この例では、元素ごとに見ていきます。
Siは、左辺では+4で、右辺では+4なので酸化も還元もされていません。
Naはルール2の(1)から+1です。
Cは、左辺では+4で、右辺では+4なので酸化も還元もされていません。
つまり、この反応は酸化還元反応ではないということになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の記事は「酸化と還元」と題したものでした。
酸化や還元は酸素に関連した場合の内容しか中学では学ばなかったと思います。
しかし、化学基礎では、水素の授受や電子の授受でも判断していきます。
電子の授受での判断ができれば、酸素や水素の授受も含んでいますので、全体に対応できます。
酸化数の計算をしっかりと理解することで、酸化や還元の判断がより簡単にできるようになると思います。
ぜひ繰り返しご覧ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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