こんにちは。アラフォーパパです。
前回の記事では、「酸と塩基ってなに?」と題して解説をいたしました。
まずは酸と塩基の定義を覚えましょう。
特に大事なのは、ブレンステッド・ローリーの定義で、水素イオンの授受で判別します。
化学反応式中の物質を酸と塩基にしっかりと分けられるようになればバッチリです。
さて、水溶液の水素イオン濃度に注目することで、わかることがあります。
それは、皆さんもご存知のpHです。
実は計算できるんです。
それではご覧ください。
水素イオン濃度
ここでは、これからよく話に出てくる水素イオン濃度について確認しておきたいと思います。
当たり前かも入れませんが、前提条件としては水溶液限定での話であるということが大事だと思います。
水素イオンが発生しないですからね。
そして今回の濃度はモル濃度を指しています。
例えば、0.010 mol/L塩酸(水溶液)の水素イオン[H+]濃度は0.010 mol/Lである、といった形で表されます。
実際の水素イオン濃度の計算については、後半で詳しく解説したいと思いますが、ここでは表記の方法について確認しておきます。
モル濃度の表記の仕方ですが、0.010 mol/Lを1.0✖️10-2 mol/Lと書けるようになっておいた方が、わかりやすくなりますので、同じ意味ですが後者の表記に慣れてください。
ここからは、1.0✖️10-n mol/Lの形で、話をしていきたいと思います。
水のイオン積(化学の範囲)
すべての水溶液の話になりますが、共通した数字が存在します。
それは、水素イオン濃度(モル濃度)[H+]と水酸化物イオン濃度(モル濃度)[OH–]を掛けると1.0×10-14 mol2/L2になる(25℃限定)というものです。
単に[H+]と書いてあったら、水素イオン濃度のことだなと、[OH–]と書いてあったら水酸化物イオン濃度のことだなと、思えるようにしておいてください。
中性では、水素イオン濃度1.0×10-7 mol/L、水酸化物イオン濃度1.0×10-7 mol/Lとなっていて、掛ければ1.0×10-14 mol2/L2となります。
水素イオン濃度が1.0×10-2 mol/Lであれば、水酸化物イオン濃度は1.0×10-12 mol/Lですし、水素イオン濃度が1.0×10-13 mol/Lであれば、水酸化物イオンは1.0×10-1 mol/Lとなります。
この性質を利用することによって、水溶液が酸性なのか塩基性なのかを判断することができます。
そして、それは皆さんのよく知る「pH」に関わってきます。
水素イオン指数
水溶液の液性(酸性、中性、塩基性)は、水素イオン濃度[H+]によって決まります。
以下のような性質がありましたね。
酸性 : [H+]>1.0×10-7 mol/L>[OH–]
中性 : [H+]=1.0×10-7 mol/L=[OH–]
塩基性 : [H+]<1.0×10-7 mol/L<[OH–]
この時に10の累乗の部分を用いて「pH」を表すことが決められています。
[H+]=1.0×10-n mol/L のとき pH=n
この式がpHを決定するときの全てです。
例題を用いてpHを決める練習をしましょう。
例題
0.04 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液25 mLを純水で希釈して100 mLとしたとき、この水溶液のpHはいくつか。
このような問題があったとして、どのように解きましょうか?
まずは、pHを求めることが目標なので、[H+]=1.0×10-n mol/Lの形を目指す必要がありますね。
しかし、今回は塩基性の水溶液なので、[OH–]なら簡単に計算できそうです。
[H+]と[OH–]を、掛けると1.0×10-14 mol2/L2になることを思い出してもらえると準備万端です。
それでは解答していきたいと思います。
水酸化ナトリウムが1価の強塩基で完全に電離するので、[OH–]は水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度と等しくなります。
純水で希釈した後の水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度は次の通りです。
0.040 mol/L ×(25mL ÷100 mL) = 0.010 mol/L = 1.0 × 10-2 mol/L
つまり、[OH–]= 1.0 × 10-2 mol/Lとなります。
水のイオン積[H+][OH–]= 1.0×10-14 mol2/L2ですので、[OH–]= 1.0 × 10-2 mol/Lを代入すると次のようになります。
[H+]×1.0 × 10-2 mol/L = 1.0×10-14 mol2/L2
両辺に102を掛ける(単位mol/Lも両辺から1つずつ削ります)と、
[H+]= 1.0×10-12 mol/L
よって、pH = 12
いかがでしょうか。
酸性の水溶液であればそのまま水素イオン濃度を求めれば良いのですが、塩基性の水溶液でしたので、水のイオン積を用いて計算しました。
次の例題では、弱酸を取り上げてみたいと思います。
例題
0.038 mol/Lの酢酸水溶液のpHが3であったとき、水溶液中の酢酸の電離度はいくつか。
この問題でも準備をしてみましょう。
目的は電離度を求めることですので、式をおさらいしましょう。
酢酸水溶液のモル濃度はわかっているので、電離した酢酸のモル濃度が必要ですね。
1価の弱酸である酢酸は、水溶液中で一定割合電離してH+を放出します。
放出したH+の濃度が今回の水溶液の[H+]となりますので、問題文中のpHから計算することができます。
それでは、準備ができたので、解答してみましょう。
まずは、pH = 3という条件から、酢酸水溶液の[H+]= 1.0×10-3 mol/Lと計算できます。
酢酸は1価の酸なので、電離した酢酸のモル濃度は1.0×10-3 mol/Lです。
電離度を求める式に当てはめると、次のようになります。
よって、電離度は0.026となります。(桁数は、問題文の中で小数点以下の桁の一番多い0.038 mol/Lに合わせます)
雑談です。
pHっていくつまであるのか気になったことはありませんか?
実は下限や上限は存在しないんだそうです。
しかし、現実には測定が困難であることや、日常では0~14の範囲程度のものしかないため、我々はその範囲のことがわかれば大丈夫です。
このpHの話では、カルフォルニアの廃鉱山からpH-3.6の強酸水が見つかっていると書かれています。
驚くような数字ですね。
さて、pHのpってなんの略なんでしょうか。
Hは水素なのでわかりやすいですよね。
インターネット上にはいろいろな話が落ちています。
水素イオン濃度の底10の対数をとるから、べき乗を表す英語のpowerの頭文字であるとか、ドイツ語のpotenz(力、能力)の頭文字とか、potential hydrogenの略でpHだとか・・・。
どれが正確な話なのかはわかりませんが、なんとなくへぇってなれば頭に入りやすくなるかもしれませんね。
ちなみに、pOHという書き方も実際にはあります。
水酸化物イオン濃度から計算されます。
pOHは水酸化物イオン指数と呼ばれるものです。
まぁ高校では出てこないと思いますけれども。
あとは、pHの読み方が、ペーハーなのか、ピーエイチなのかについても調べてみると息抜きになるかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の記事は「水素イオン濃度の利用」と題したものでした。
押さえておくポイントは3つです。
モル濃度を10の累乗を用いて表すこと。
水のイオン積を覚えておくこと。
水素イオン濃度からpHに変換できるようにすることです。
ぜひ繰り返しご覧ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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