こんにちは。アラフォーパパです。
前回は、「シャルガフの規則」について解説しました。
シャルガフの規則は2本鎖DNAの4種類の塩基についての規則性を表していることを学びました。
生物基礎では、この規則を用いた計算問題が出されることがよくあります。
自然科学としてDNA鎖に含まれる塩基に関する法則を理解してもらうことが1番の目的になってほしいですが、受験生としては計算問題をできるようにすることが目的となってしまうのかなとおもうとちょっと悲しいところもあります。
さて、今回は形質転換について、解説していきたいと思います。
もちろんDNAが関連しています。
生物基礎では、肺炎双球菌(肺炎球菌)の形質転換が代表例として挙げられています。
代表例をしっかりと覚えた後に、他の例も探してみましょう。
それではご覧ください。
プロを指名出来るオンライン家庭教師形質転換とは
形質転換とは、細菌の細胞に外からDNA分子が入り、菌の性質が変わることをいいます。
今回代表例として挙げられている肺炎双球菌(肺炎球菌)は、病原性のあるS型菌と、病原性のないR型菌が存在しています。
病原性の有無において、形質転換が引き起こされた結果、S型とR型が存在しているということになります。
形質転換という現象を発見したのは、グリフィスです。
また、形質転換を引き起こす因子がDNAにあることを解明したのはエイブリーです。
この2名の科学者がどのようにして形質転換に関わる情報を得たのか、実験の内容を見ていきましょう。
グリフィスの実験
グリフィスは、フレデリック・グリフィスという名前で、イギリスの細菌学者・遺伝学者です。
医師をしており、イギリスの保健省に勤めていました。
1928年にハツカネズミを用いた実験によって、肺炎双球菌(肺炎球菌)に形質転換が起こることを示しました。
実験では、次のものを準備して開始されました。
①ハツカネズミ
②R型の肺炎球菌(病原性なし)
③S型の肺炎球菌(病原性あり)
④注射器とかいろいろ
まずはコントロール(基準となる実験)です。
A:ハツカネズミにR型肺炎球菌を注射すると、発症しません。
これは当然ですね。事実の確認です。
B:ハツカネズミにS型肺炎球菌を注射すると、発症する。
これも当然ですね。事実の確認です。
それでは、手を加えてみましょう。
C:ハツカネズミに十分に加熱したS型肺炎球菌を注射すると、発症しません。
S型肺炎球菌を注射したのに発症しないということは、十分に加熱したことによって肺炎球菌が死滅していると考えられます。
ここで、予想をしてみましょう。
D:R型菌と十分に加熱したS型肺炎球菌を一緒にハツカネズミに注射したら・・・
発症するでしょうか?しないでしょうか?
AとCから予想される回答は、「発症しない」となるのが妥当だと思います。
しかし、実際には、発症します。
ここで、予想と異なる結果が出現したことで、何かが起きていると分かるわけです。
(この時点では、なぜ発症するのかは不明なままです。)
この実験の結果から、グリフィスは死滅したS型細胞から、病原性がR型に移ったと考え、それを形質転換と呼びました。
なお、R型とS型を両方とも十分に加熱して死滅させた場合には、発症しません。
そのため、生きていたR型の肺炎球菌に何かがおきて、病原性を持ったと考えることが妥当ということになります。
このグリフィスが発見した形質転換の原因をエイブリーがはっきりさせることになります。
エイブリーの実験
グリフィスの発見した形質転換の原因を探るための実験をエイブリーが行いました。
エイブリーも肺炎双球菌のS型とR型の菌を用いて実験を行っています。
①S型肺炎双球菌
②R型肺炎双球菌
この2つの菌の準備と、菌に対する操作、そして菌の培養を通して形質転換の原因を発見しました。
A:まずは、S型菌抽出液をR型菌にまぜて培養するという実験からスタートしました。
これは、グリフィスの実験において、S型菌を加熱し死滅させた状態でR型菌と混ぜて注射したことを受けて、同様の状態を動物に注射せずに再現するための実験です。
この実験でS型菌が出現したことが判明しました。
これが形質転換したという証明になります。
そして出現したS型菌は形質を保持して増殖したことも確認されました。
B:次に、S型菌抽出液+タンパク質分解酵素をR型菌に混ぜて培養する実験です。
S型菌抽出液には、DNA、タンパク質、多糖類(菌体の表面を構成する物質)、脂質といった物質が含まれています。
タンパク質分解酵素を混ぜ込むことで、タンパク質が分解されるので、R型菌と混ぜたときにS型菌が生まれなければ、タンパク質が原因であったと分かるわけです。
結果としては、S型菌が発生したため、DNAか多糖類か脂質が形質転換の要因だろうということまでがわかります。
C:同様に、S型菌抽出液+DNA分解酵素をR型菌に混ぜて培養する実験です。
タンパク質のときと同様に、S型菌が発生しなければ、DNAが原因であったとわかります。
そして、この実験の結果では、S型菌は出現しませんでした。
つまり、形質転換が起きなかったということです。
こうしてDNAが原因であったと判明しました。
実際の研究現場では、脂質や多糖類が本当に関係ないのか?についてもしっかりと検討する必要があります。
しかし、生物基礎ではDNAが形質転換の原因であると分かるためには、どのような実験が必要なのかを理解してもらえれば大丈夫だと思います。
補足
さて、グリフィスやエイブリーの実験から、DNAが形質転換の原因であることが判明しました。
ここで、もう一つわかったことがあったのです。
今回の肺炎双球菌の病原性の形質転換に関連したDNAは熱に安定なDNAであるということです。
グリフィスの実験では、加熱殺菌したあとのS型菌を利用しています。
しかし、形質転換が起きているのです。
もし、肺炎球菌の病原性の形質転換に関連したDNAが熱に不安定であったら、形質転換の発見はもっと遅れていたかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の記事は「形質転換」に関するものでした。
形質転換にはグリフィスとエイブリーという科学者の実験が重要です。
グリフィスによる形質転換の発見、エイブリーによる形質転換を引き起こす物質(DNA)の解明についてしっかりと覚えておきましょう。
さらに、この二人が行った実験内容とその意義を理解することがとても重要です。
ぜひ覚えてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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