こんにちは。アラフォーパパです。
前回は、「ウイルスは生物か?」という記事を書きました。
こんなにも科学が発展していると思う世の中であっても、高校でやる内容の中に、まだまだ統一見解がでていない話もあるので、それが学んでいて面白いなと思うところです。
さて、今回の記事では、「細胞小器官」について、書いていきたいと思います。
今回ご紹介するような細胞小器官については、構造や働きがある程度は確定している状態です。
受験においては、確定している情報が試験範囲となりますので、しっかりと覚えましょう。
それでは、ご覧ください。
目次
細胞小器官とは
植物や動物など真核生物の細胞内には,小胞体,ゴルジ体,リソソーム,エンドソームなど,一重の膜で囲まれた細胞小器官(オルガネラ)が存在しています。
この細胞小器官という言葉は、細胞の内部で特に分化した形態や機能を持つ構造の総称のことです。
それぞれ働きがあり、例えばタンパク質合成の場であったり、不要物や異物を処理する場であったりします。
大まかな図を示します。
- ①核小体
- ②核
- ③リボソーム
- ④小胞
- ⑤粗面小胞体
- ⑥ゴルジ体
- ⑦細胞骨格
- ⑧滑面小胞体
- ⑨ミトコンドリア
- ⑩液胞
- ⑪サイトゾル
- ⑫リソソーム
- ⑬中心体
以上のような細胞小器官のうちのいくつかについて、解説していきたいと思っています。
また、わかりやすい動画がありましたので、貼っておきたいと思います。
核
核を考える上で重要なのは、核小体と染色体と核膜です。
核小体
核小体は核の内部にある球形の器官で、1つの核に1~数個あるとされ、核の中で最も大きな構造物です。
リボソームRNA(rRNA)を合成する場とされていて、RNAポリメラーゼⅠというリボソームRNAの前駆体を合成する酵素を含んでいます。
少なくとも1830年代には、当時の顕微鏡で観察され、複数の科学者によってその存在が記載されていました。
ここから先は、教科書の範囲を超えます。
核小体は膜を持たないために、長い間その構造の維持がどのように行われてきたのかが疑問とされてきました。
しかし、最新の知見では、ポリグルタミン結合タンパク質5 (polyglutamine binding protein 5、 略称 PQBP5、別名NOL10)という分子が正常時の核小体形成と細胞ストレス下の核小体構造維持・回復のために、必須であることが報告されています。
染色体
染色体とは、ひものような長い分子であるDNAがヒストンというタンパク質とともに小さく折りたたまれた棒状の構造体のことをいいます。
染色体関連の用語は様々あり、わかりにくいため、図を引用したいと思います。
DNAとヒストンから、ヌクレオソームができて、それが連なったものがクロマチンと呼ばれます。
クロマチンが組み合わさって、最終的にクロマソーム、つまり染色体の形が作られます。
動画でも確かめてみてください。
顕微鏡で見るときには、染色をすることで染色体を見ることが可能です。
使われる液は、酢酸カーミン溶液や酢酸オルセイン液です。
酢酸カーミン溶液では、カーミンが吸着して赤く染色されます。
酢酸オルセイン溶液では、オルセインによって紫色に染色されます。
試薬の名前と染色後の色を合わせて覚えておきましょう。
核膜
核膜とは、核の周りにある内層と外層からなる二重膜のことです。
核膜孔と呼ばれる穴が開いており、核と細胞質の間の物質の出入りを調節しています。
外層にある核外膜は、脂質成分が多く小胞体と繋がっています。
核内膜は、タンパク質に富む構造で、メッシュ状の構造に裏打ちされており、クロマチンと物理的に繋がっています。
細胞質
細胞質には、ミトコンドリアやゴルジ体、リボソームなどの小器官が存在しています。
葉緑体のように基本的に植物細胞のみ見られる器官や中心体のように動物細胞でのみ見られるものもあります。
一つずつ見ていきましょう。
ミトコンドリア
ミトコンドリアとは、摂取した栄養をATP(アデノシン三リン酸)という細胞が使いやすいエネルギーに変換する役割がある小器官です。
約20億年前、我々ヒトを含む全ての真核生物の祖先が、酸素を用いてエネルギーを作る細菌を外部から取り込み、その細菌がミトコンドリアになったと言われています。
そのため、ミトコンドリアには細菌由来のDNAが存在しており、ミトコンドリアDNAと呼ばれています。
本当に細菌由来なのでしょうか?
少し深掘りしてみましょう。
細胞内共生説
ミトコンドリアは内膜・外膜の2枚の膜(二重膜)から成ります。
内膜は、その主成分である脂質や膜の中で働くタンパク質などが、細菌の内膜と良く似ています。
ミトコンドリアのDNAは、核のDNAとは違った特徴を持っていて、こちらも細菌の特徴に近いと言われています。
さらにミトコンドリア内にはこのDNAの情報からタンパク質をつくる装置が備わっていて、それらも細菌の装置に近い特徴を持っています。
加えて、細胞分裂をしないときにも、細胞が必要だと判断したときにはどんどん分裂して増殖することができます。
これらの情報から、細菌の細胞内共生説が有力となっています。
ATP産生
ミトコンドリアの働きの中で、いちばん有名なものは、ATPの産生だと思います。
細胞内呼吸の場であり、呼吸によって有機物を分解し、エネルギーを取り出します。
エネルギーというのがATP(アデノシン三リン酸)のことです。
ATPは体内で日に延べ50~100kgが作られていますが、そのうちの約95%はミトコンドリアによってつくられています。
ミトコンドリア内部のひだ状の膜からなるクリステがあり、その隙間にミトコンドリア基質と呼ばれる部位が存在し、そこにクエン酸回路(ATP回路)に必要な酵素が含まれています。
そして、電子伝達系によって酸化的リン酸化がおきて、ATPが産生されます。
ここから先は、生物基礎には直接関係しないかもしれませんが、ミトコンドリアの話がATP産生だけでないことを知っていただければと思います。
オートファジー
細胞のなかにあるミトコンドリアがどのようにして新陳代謝をしているのかについては、よくわかっていませんでした。
増殖することができることはわかっていましたので、特に分解については不明だったのです。
しかし、最近の研究では、分解にオートファジーが関わっていることがわかってきています。
それも、ミトコンドリアのためにあるようなオートファジーです。
ミトコンドリアを分解する機構は、ミトコンドリアオートファジー(mitochondria autophagy又はmitophagy(マイトファジー))と呼ばれています。
さて、どのような過程を経ていくのでしょうか。
マイトファジーが誘導されると隔離膜と呼ばれる脂質二重膜が細胞質内に現れ、伸長しミトコンドリアを包み込みます。
完全に包み込んだ状態がオートファゴソームです。
このオートファゴソームがリソソームと融合します。
リソソーム内は酸性で、加水分解酵素で満たされており、これらの酵素により取り込まれたミトコンドリアが分解されます。
どのようにして、分解するべきミトコンドリアを選択しているのかは未だ不明のようですが、今後研究されて明らかになっていくことと思います。
外膜の特徴
ミトコンドリアの外膜には、細菌の外膜にしか含まれない特徴的な構造のタンパク質(βバレル型膜タンパク質)が含まれていることがわかっています。
教科書では、「ミトコンドリアの外膜は、ミトコンドリアを取り込んだ細胞の膜の性質に近い。したがって、外膜は細胞の膜が起源である」と習うことがあるようです。
しかし、特徴から考えると、「ミトコンドリアの外膜は好気性細菌の外膜が起源である」と考える方が適切なのかもしれません。
鉄-硫黄クラスター
鉄-硫黄クラスターとは、細胞の中で働くいろいろなタンパク質に必要なもので、非ヘム鉄の一種です。
ヒトの細胞では、鉄-硫黄クラスターを作る装置はミトコンドリアの中にしかありません。
ATPの産生以外にも、細胞が生きていく上でとても重要な働きがあることを知っておいてください。
小胞体
小胞体には、リボソームが付着している粗面小胞体とリボソームが付着していない滑面小胞体が存在します。
リン脂質の二重層が1枚だけで作られた構造で、それぞれ役割が異なっています。
粗面小胞体
小胞体の膜表面にリボソームが付着していて、観察するとザラザラに見えるために粗面小胞体と名前が付きました。
タンパク質の合成をリボソームが行っている場所で、作られたタンパク質は小胞体にくるまれてゴルジ体へと輸送されます。
また、脂質成分を作る役割も果たしています。
この脂質は細胞膜を構成する脂質も含まれています。
滑面小胞体
細胞の機能により働きが異なりますが、コレステロールの合成や分解、脂質代謝、薬物の代謝、カルシウムの貯蔵など様々な機能を担っています。
副腎皮質(ステロイド合成)や精巣、卵巣(性ホルモン合成)で滑面小胞体が発達しているとされています。
肝臓による薬物代謝に関わっており、特に脂溶性薬物の分解と水溶性化と関係があり、肝臓でも発達していると言われています。
ゴルジ体
ゴルジ体とは、一重膜の扁平な袋の重なりで出来ており、物質の分泌を行う場所です。
粗面小胞体から輸送小胞の形で、ゴルジ体に送り込まれたタンパク質に多糖類や脂質を結合させて、リポ蛋白や糖蛋白の合成を行うことを目的としており、作り終えた後に分泌します。
名称は発見者の名前から来ており、イタリア人の病理学者カミッロ・ゴルジが由来です。
発見当初は、間違いであるという意見も多かったのですが、電子顕微鏡が登場してから研究が進みました。
前述した通り、タンパク質を加工して分泌することはわかっているのですが、その経過についてはまだはっきりと分かっているわけではなく、様々な説が唱えられています。
リボソーム
リボソームは、直径15~20mmの粒子状の形をしており、タンパク質とリボソームRNA(rRNA)で構成されています。
mRNAがリボソームにはさまれると、そこで、tRNAが,mRNAのコドンを認識します。
リボソームの酵素作用によって、tRNAで運ばれてきたアミノ酸が隣り合ったアミノ酸とペプチド結合をして連なっていき、最終的に機能をもったタンパク質が合成されます。
リソソーム(ライソソーム)
ゴルジ体由来で、1重の膜で包まれています。
ミトコンドリアとは異なり、呼吸活性を持ちません。
細胞内の高分子(栄養素や異物など)を消化する機能があります。
70種ほどの加水分解酵素を持っていて、細胞のエンドサイトーシスで取り込まれた物質を加水分解します。
これらの酵素はリボソームで合成され、粗面小胞体、ゴルジ体を経て、小胞輸送でリソソームに送られます。
細菌も異物としてリソソームで分解され、その後に免疫機構へ標的部位を送る役割もあります。
葉緑体
葉緑体は、光合成の場であり植物のみにあります。
二重膜で覆われており、内部に扁平状の構造が重なっています。
扁平状の構造のことをチラコイドと言います。
チラコイドには光合成色素が入っており、緑色をしていて、それが葉緑体の色になっています。
光合成色素が光を吸収することで、光合成を行うことができるのです。
チラコイドには密に重なっている所があり、グラナと呼ばれています。
また、チラコイドやグラナはストロマと呼ばれる水性領域に浮かんでいるような状態です。
ストロマは二酸化炭素を糖質に還元する可溶性酵素を含んでいます。
植物のみが葉緑体を持っていると書きましたが、利用しているのは動物にもいます。
ウミウシです。>>(1-2)進化の証拠(高校生物基礎の総復習講座)
ウミウシは藻類から盗んだ葉緑体(盗葉緑体)を細胞の中で何らかの方法を用いて維持していると言われているのです。
中心体
中心体とは、動物細胞中で微小管形成の核として働く細胞小器官のことです。
その中心体の中心に存在する構造を中心子といいます。
中心子はトリプレット微小管が円筒状に9本並んだ構造をしています。
この構造パターンは原生生物からヒトに至るまで共通する普遍的なものといわれています。
また、酵母や植物に存在しない理由は進化の過程で失われたからであろうと言われています。
中心体はわからないことも多く、現状では2つの働きが確定しています。
1つは、細胞分裂のときに染色体を分ける紡錘糸を形作ることです。
この紡錘糸は中心体からのびる微小管です。
中心体と紡錘糸、染色体をまとめて紡錘体と呼びます。
また、紡錘糸と染色体の結合部分は動原体と呼ばれます。
2つ目は、 精子の鞭毛や細胞の繊毛といった構造体を形成する機能です。
こちらは今回は省略させていただきます。
このように、中心体はわかっている機能だけでも重要な働きをしています。
細胞膜・細胞壁
細胞は、細胞を外界から仕切る膜(細胞膜)と細胞質を小部屋に仕切る膜(細胞内膜系)によって作られています。
リン脂質と膜タンパク質で構成(脂質二重層)され、細胞内のミトコンドリアや小胞体などの膜とも共通した構造をしています。
また、植物には細胞膜の外側に細胞壁が存在します。
細胞壁はセルロースが主成分で、植物細胞の形を維持、保護することが役割となっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
細胞には様々な小器官があり、それぞれ異なる機能を持っています。
生きていくために必要なタンパク質の合成や細胞の分裂に必要な部品の作成、異物の分解など様々な機能があります。
細胞の内部には必要なものしかありませんので、すべて覚えるつもりで復習をしましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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